「食物繊維」が糖尿病の人の寿命を延ばす 全粒穀物が血糖コントロールを改善

 食物繊維をより多く摂取することで、糖尿病の人の平均余命を延ばせる可能性があるという研究が発表された。
 全粒粉のパン、玄米、発芽玄米、雑穀米、麦ごはんなどの「全粒穀物」を食べると、糖尿病や肥満のリスクを低く抑えられるという。
全粒穀物が血糖コントロールを改善する
 食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する食品成分。腸の働きをよくしたり、糖質の吸収をゆるやかにするなど、多くの健康効果がある。

 食物繊維が多い食事は、よく噛むために満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防いで肥満予防につながる。また、脂質やコレステロールなどの吸収を抑えることで、動脈硬化の予防にもつながる。

 ニュージーランドのオタゴ大学が行った2件に研究によると、食物繊維をより多く摂取することで、糖尿病の人の平均余命の改善を期待できる可能性がある。

 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない穀物のこと。

 「精製された小麦粉や白米などを食べると、炭水化物の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなります。血糖値をコントロールする必要のある糖尿病の人にとっては勧められるのは全粒穀物です」と、オタゴ大学医学部および国立心臓財団のアンドリュー レイノルズ氏は言う。
1型糖尿病と2型糖尿病の両方で食物繊維は有利
 オタゴ大学の研究チームは1つめの研究で、1型糖尿病および2型糖尿病の成人8,300人から収集したデータを解析した。食物繊維の摂取量の多い人は、少ない人に比べ、早期死亡率が大幅に低下することが明らかになった。

 食物繊維の摂取量の多い人は、少ない人に比べ、空腹時血糖値、インスリン値、インスリン抵抗性、総コレステロール、悪玉のLDLコレステロール、中性脂肪などがそれぞれ良好な傾向がみられた。

 「ニュージーランド人の食物繊維の1日の平均摂取量は19gぐらいです。これに比べて、食物繊維を1日に35g摂っている人では、早期死亡リスクが35%減少するという報告があります」と、レイノルズ氏は言う。

 食物繊維の摂取源となるのは、▼穀類、▼野菜類、▼海藻類、▼豆類、▼キノコ類、▼果物類などだが、もっとも得られやすいのは穀類だという。

 「これらの食品を積極的に食べて、食物繊維を増やす食事スタイルは、世界中のすべての人々に勧められます」と、レイノルズ氏は強調する。

 「精白された小麦粉を使った白パンを、食物繊維の豊富な全粒紛を使ったパンに置き換えたり、白米を玄米に置き換えたりする食事スタイルは、糖尿病や肥満のある人にも勧められます。ふだんの食事に缶詰の野菜や豆類を加えるだけでも、食物繊維の摂取量は増やせます」としている。

 食事で摂る野菜の量を増やすことは、その方法が生鮮品、冷凍品、缶詰のどれであっても、良い選択になるという。
食物繊維を増やす食事療法は効果的
 研究チームはまた、糖尿病予備群、1型糖尿病、2型糖尿病の成人を対象に、全粒穀物などにより食物繊維の摂取量を増やす食事療法を行った42件の試験をメタ解析した。これらの試験は、6週間以上行われ、参加者は1,789人に上った。

 その結果、糖尿病予備群、1型糖尿病、2型糖尿病のすべてのタイプの糖尿病で、食物繊維を増やすことで、血糖コントロール、コレステロール値、体重が一貫して改善されることを明らかにした。

 研究を行ったオタゴ大学医学部のジム マン教授は、ニュージーランドの国立研究機関であるヘルス ライブス ナショナル サイエンス チャレンジャーの責任者でもあり、40年以上にわたり糖尿病の研究に携わってきた。

 マン教授らが、糖尿病の食事療法として食物繊維を増やすことに着目し、対照試験を開始したのは1970年代のことだ。「食物繊維を増やす食事療法は、薬物療法と同等にメリットが多いことが分かりました。これを実証するために40年の研究とメタ解析が必要でした」と、述べている。
食物繊維は自然に近い食品から摂るのが良い
 2つめの研究では、加工食品においても食物繊維のメリットは保たれるかを調べた。この研究で、レイモンド氏とマン教授らは、ダニーデンに在住している2型糖尿病の成人を対象に、食物繊維の含まれる食品の加工度によって、どのように影響が変わってくるかを調べた。

 その結果、全粒穀物は食物繊維の重要な供給源となるが、加工度の高い食品になると、たとえ食物繊維が含まれていても効果が薄れることを突き止めた。

 この実験で参加者は、全粒粉の入ったパンや、オート麦、玄米などの加工度の低い食品を2週間食べ、その後、同等の食物繊維が含まれる、加工度の高いインスタントなバーなどの食品を2週間食べた。

 研究チームは、持続して血糖測定を測定できるデバイスを使用して、2週間の介入期間中に、参加者の昼と夜の血糖値の変化を記録した。

 その結果、食物繊維の含まれており、加工度が最小限に抑えられた全粒穀物などの食品を摂取すると、1日を通して血糖値の変動の幅が少ないことが明らかになった。2週間後には体重も平均して1kg近く減っていた。

 それに対し、加工度の高い高食物繊維の食品を食べた場合でも、血糖値には好ましい影響が得られたが、体重はむしろ増える傾向がみられた。
食物繊維含有の加工食品には工夫が必要
 身近にある全粒穀物として、全粒粉の小麦を使ったパンやパスタ、オートミールなどの食品、玄米、玄米を発芽させた発芽玄米、雑穀米、大麦などの入った麦ごはんなどがある。

 「食物繊維の豊富な全粒穀物が健康に良いことは、今では広く認知されるようになり、スーパーマーケットなどでは、食物繊維が多く含まれると謳った超加工食品が増えています。しかし、食物繊維は、より加工度の低い自然に近い食品から摂取した方が、メリットが多い可能性があります」と、マン教授は述べている。

 食事で全粒穀物を多く摂ると、精製された穀物の多い食事よりも、1型糖尿病や2型糖尿病、肥満、心臓病の人の健康リスクを低く抑えられることは、世界中の多くの研究で示されている。

 「そうした全粒穀物を利用するのが難しいという人も多くいます。そうした人向けに、どのような加工食品を作れば、食物繊維のメリットを生かせるかを突き止める必要があります」と、レイノルズ博士は言う。

 「ひとつのアイデアとして、全粒穀物を細かく挽くことなく、糖類や塩分などを添加しないで加工すれば、食物繊維のメリットを得られやすくなる可能性があります」としている。

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Dietary fibre and whole grains in diabetes management: Systematic review and meta-analyses(PLOS Medicine 2020年3月6日)
Whole-Grain Processing and Glycemic Control in Type 2 Diabetes: A Randomized Crossover Trial(Diabetes Care 2020年5月13日)
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