【トピックス・講演レポート】
日常生活における手軽な血糖ケア

 スローカロリー研究会第7回年次講演会(3月21日~4月22日)のスローカロリー関連企業報告より、「日常生活における手軽な血糖ケア」の講演レポートをお届けしています。講演動画も引き続き、公開しています。本レポートで示したデータは動画で詳細をご覧ください。
 健康で長生きするためには、日頃の健康管理が重要で、その手段の一つとして糖尿病の予防が挙げられます。糖尿病予防には、食後血糖上昇を抑えることが有効とされていますが、日常生活の中で食事内容のみでコントロールすることは非常に困難です。
 そこで、松谷化学工業株式会社 研究所第一部1グループの上原 悠子氏が、食後血糖の上昇を抑える日常生活の中で手軽に取り入れられる血糖ケアを同社の素材を例に紹介します。

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「食事にオン」「甘味料をチェンジ」「原材料をチェック」でお手軽血糖ケア

 松谷化学工業は澱粉の総合メーカー。「澱粉・加工澱粉」、「澱粉分解物(デキストリンや水あめ)」、レアシュガースウィートなどの機能性素材を取り扱っている。

 上原氏は、食後血糖の上昇を抑えるために、「1. 食事にオン」「2. 甘味料をチェンジ」「3. 原材料をチェック」の3つに分けてお手軽な血糖ケアを紹介する。

1. 食事にオン

 普段の食事に食後血糖上昇を穏やかにする素材をオンするだけのとても簡単な方法。血糖上昇を抑制する効果があるトウモロコシ澱粉を原料として作られた同社の難消化性デキストリンを使用したデータを紹介。

 難消化性デキストリンは、特定保健用食品の36.2%に成分として採用されている。本素材を実際に食事とともにお茶にとかして摂取した試験では、コントロールに比べて摂取後の血糖上昇が有意に抑えられ、またインスリンも低値を示した。

 また、難消化性デキストリンを配合した糖尿病用の濃厚流動食の試験結果では、血糖上昇を抑制する必要がない正常型健常者の場合は、血糖値は上昇しないが、境界型糖尿病の方では血糖値の上昇を抑える効果が確認されていることを示した。

 実際の利用法としては、食事やおやつの際の飲み物や、食事の際のお味噌汁やスープ、さらにカレーやシチューに入れるなどが簡単と紹介した。

2. 甘味料をチェンジ

 飲料や料理に使用している砂糖を置き換える方法である。同社の素材としては、レアシュガースウィートを例として取り上げた。

 レアシュガースウィートは異性化液糖を原料に作られる希少糖含有シロップで主にプシコース、ソルボース、タガトース、アロースの4種類の希少糖が含まれている。

 甘味は砂糖の9割程度で砂糖と似た味質。低GI食品として機能性表示食品に登録されており、摂取後の血糖上昇は穏やかとなる。

 レアシュガースウィートの利用方法として、もっとも簡単な方法がコーヒーや紅茶に入れる砂糖を置き替える方法。次に料理の砂糖やみりんの代わりに使う方法もある。塩の味を強く感じる塩味増強効果もあるため減塩にもつながるという。さらに、応用編として、果実を漬ける時の氷砂糖やはちみつの代わりに使う方法も紹介した。

3. 原材料をチェック

 一般製品の中には物性改良のために使用しているものでも、実は食後血糖上昇が穏やかな素材が多くある。上原氏は、水に容易に溶け、栄養剤の炭水化物源として利用されている「還元澱粉分解物」を素材として取り上げた。

 還元澱粉分解物は糖アルコールの仲間である。しかし同じ糖アルコールであるソルビトールが浸透圧性の下痢を誘発しやすいのに比較して、還元澱粉分解物は腸内でグルコースに分解、吸収されるため、大腸に到達する糖が非常に少なく、下痢を誘発しにくいという。

 還元澱粉分解物を摂取した際の血糖のデータでは、グルコース及び還元前の澱粉分解物に比べて血糖の上昇は有意に抑制され、同時にインスリンも同様に有意に抑制されている。

 しかしながら、商品のパッケージにはこのような効果については記載されておらず、原材料名から情報を得る必要がある。還元澱粉分解物(別名、還元水飴)は、ノンシュガーキャンディーやパスタソースやドレッシングなど、様々な目的で幅広い製品に使用されている。

 なお、難消化性デキストリンを配合した製品も数多く販売されており、特定保健用食品や機能性表食品の栄養成分であるため、パッケージに記載されている。また、レアシュガースウィートの場合は「希少糖含有シロップ」と記載れている場合が多い。

 最後に、上原氏は、「食事にオン、素材をチェンジ、原材料をチェックという3つの方法は、日頃の食生活で気軽で負担なく取り入れられる手軽な手段であり、血糖ケアの必要な方の生活のヒントになれば幸いです」と講演を結んだ。

(スローカロリー研究会事務局)

(2021年04月 更新)
(2021年04月 公開)
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