【世界健康フォーラム2021・静岡 講演レポート】
健康寿命はみんなで延ばせる 食生活で日本を元気に!

 NPO法人 世界健康フロンティア研究会(理事長 家森幸男先生、当研究会顧問)主催で、ユネスコや厚生労働省などの後援により"健康で健やかに生きるための「食」のあり方"をコンセプトとして毎年開催されている「世界健康フォーラム」。第42回となる今回は『健康寿命はみんなで延ばせる 食環境で日本を元気に!』をテーマに開催された。
 今回のフォーラムでは冒頭、京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏が「健康寿命を延ばす再生医療の展望」というタイトルで、研究と臨床の最新情報を解説。iPS細胞技術が重篤な疾患の治療のみでなく、健康寿命の延伸にも役立つ可能性を語りました。次に、英国ロンドン大学予防医学研究所所長のグラハムAマクレガー氏が「食環境で健康寿命は延ばせる!イギリスに学ぶ」とのタイトルで、同国内で流通する食品の塩分含有量をいかに減らしてきたか、その結果、英国民の血圧や心血管疾患をいかに減少したかを概説しています。
 本記事は、それらの講演に続いて行われたパネルディスカッションのハイライトです。

パネルディスカッション

 「健康寿命はみんなで伸ばせる 食環境で日本を元気に!」

《コーディネーター》
宮崎 緑 氏 (千葉商科大学教授・国際教養学部長)
《パネリスト》
赤川 英毅 氏(国立循環器病研究センターOIC 社会実装推進室 室長)
木苗 直秀 氏(静岡県教育委員会教育長))
佐々木 誠 氏(国分グループ本社株式会社ヘルスケア統括部副部長)
渡辺満里奈氏(タレント)
家森 幸男 氏(武庫川女子大学国際健康開発研究所 所長)

■人生の最後の10年をいかに過ごすか

 ディスカッションに先立ち、我が国は世界有数の長寿国だが平均寿命と健康寿命との間に約10年の差があり、その差をいかに埋めるべきかを問うVTRが会場に流された。このVTRの感想を求められた渡辺氏は、「健康寿命の平均が70代とのことだが、70代と言えばまだ元気に活躍しているというイメージがあったので非常に驚いた。本気になって気を付けなければいけない」と述べた。これに対し赤川氏は、「必ずしも全くの健康でなければならないというのではなく、例えば高血圧であっても食生活を工夫することなどで日常生活を十分楽しめる。病気をコントロールしながら生活を充実させることが大切ではないか」と補足解説。佐々木氏も、「健康ばかりを意識していては楽しく生きられないので、日々の生活の中での何気ない実践が健康寿命延伸につながるのではないか」と語った。

 一方、木苗氏は、静岡県は食産物に恵まれているものの、魚介類摂取量の多い県東部では食塩摂取量が多いという実態に言及。このような生活環境による食習慣への影響が健康寿命にも関与し得る可能性があるとした。これを受けて家森氏は、世界各地の人々の食事中の栄養素を検討した同氏の研究結果を紹介。日本人は世界で最も魚と大豆を多く摂っており動脈硬化リスクが低いものの、食塩の摂取過多がそのメリットの一部を相殺してしまっている現状を指摘。恵まれた食材をいかに賢く食べるかという"知識のワクチン"を普及させる必要性を訴えた。

■社会全体で減塩に取り組む、さまざまなプロジェクトが始まっている

 続いて会場には、国立循環器病研究センターによる減塩プロジェクト「かるしお」にスポットを当てたVTRが流された。出汁や素材の美味しさを使いながら、塩分が少ない健康食レシピを書籍等により紹介するだけでなく、一定の基準を満たす食品を同研究センターが「かるしお」食品として認定する事業も拡大し、既に多数の食品が流通しているという。

 VTRに続き赤川氏が「かるしお」プロジェクトを詳述。食塩が1食あたり2g以下または既存品に比べて30%以上少ないだけでなく、タンパク質もしっかり摂れるものを認定しているとのことだ。佐々木氏によると、食品業界内でも「かるしお」の存在感が高まりつつあるという。家森氏は、「家庭で1食あたり2gという基準を毎回続けるのは困難。しかし、3食のうち1食でも2gに変えると、1週間もすればそれが当たり前の味になって美味しく感じられるだろう」とアドバイス。これには渡辺氏も「少し勇気づけられた」と答え、また木苗氏は「静岡県内の小・中・高校や栄養関係学科のある大学へ広報してみたい」と感想を語った。

 「かるしお」プロジェクトは、一般市民の健康推進のためのポピュレーションアプローチと言える。このような新たな活動は「かるしお」プロジェクト以外にも始まっている。その一つは、佐々木氏らの取り組み、健康コミュニティー、略して「けんコミ」だ。ドラッグストアやスーパーの一角に健康測定器を設置、来客の血管年齢や食習慣を無料で評価したうえで、管理栄養士が生活習慣改善をアドバイスするというもの。その「けんコミ」では「かるしお」認定食品の利用も呼び掛けているとのことで、社会システムとしての減塩推進活動が着実に進展している実態が報告された。

■見える化"で個人レベルでの減塩を支援

 社会的な減塩の取り組みと並行し、もちろん個人個人が食塩摂取量を見直すことも必要だ。しかしそれには、個々人が現在の食塩摂取量を知り、食生活改善後にはその効果を知ることが欠かせない。ところが従来、それを知ることのできる簡便なツールがなかったため、減塩が掛け声に終わってしまうことが少なくなかった。この問題の解決策として、静岡県浜松市での取り組みがVTRで紹介された。静岡県食育協会と常葉大学や東海大学の研究者らがタッグを組み、個人が自分自身で早朝第一尿を採取して郵送すると、塩分摂取による負荷の目安であるナトリウム/カリウム比の測定結果が通知されるという仕組みだ。

 このプロジェクトを推し進めてきた研究者の一人、東海大学健康学部健康マネジメント学科准教授の森真理氏は、「各家庭での食事の改善効果を実際に尿バイオマーカーで示すことができる点が、このプロジェクトのポイントだ」と解説。参加者からは、食事に気を付けた成果を数値で確認できることのメリットを評価する声が上がっているという。

 静岡県ではこの他にも、市民レベルの健康推進活動が続けられている。その一つ「富士33(ふじさんさん)」活動を木苗氏が解説。この活動は、1人では続かないことが多い健康的な生活習慣改善を、家族や友人、職場仲間など3人1組になって取り組み、継続していくことを促すものとのこと。これには渡辺氏も、最近毎朝9時に友人とともにオンラインでエクササイズをするようになったことを語り、「一人では続かないが仲間がいれば続けられる」と、「富士33」活動への共感を示した。

 パネルディスカッションではこれらのほかに、塩(Salt)を1グラム減らすためのレシピのグランプリ「S-1g」の紹介など、減塩に向けた活動についても話し合われた。

(文・スローカロリー研究会事務局)

(2022年02月 更新)
(2022年01月 公開)
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