一般社団法人スローカロリー研究会

【トピックス・講演レポート】 イヌリンの食後血糖値の上昇抑制について

2021年4月22日

 スローカロリー研究会第7回年次講演会(3月21日~4月22日)のスローカロリー関連企業報告より、「イヌリンの食後血糖値の上昇抑制について」の講演レポートをお届けしています。講演動画も引き続き、公開しています。本レポートで示したデータは動画で詳細を紹介しています。 イヌリンは、キク科植物であるごぼうやキクイモ、チコリなどの根に存在する多糖類。ヒトの消化器では分解されず大腸の腸内細菌叢によって代謝されるため、栄養成分表示では糖質ではなく食物繊維として扱われています。そのため、整腸作用について報告されているが、近年は食後の血糖値上昇抑制の報告も多いという。 DKSHジャパン株式会社 食品飲料ビジネスライン 吉成 織恵氏が、イヌリンが血糖値抑制に及ぼす効果について紹介します。

イヌリンは多彩な栄誉医機能をもつ天然素材

1. イヌリンとは

 イヌリンは様々な植物に含まれる多糖類で、チコリ(根)、ゴボウ(根)、タマネギ(球根)、ニンニク(球根)、バナナ(実)などに含まれているイヌリン含量。同社のイヌリンは、チコリ(根)から熱水抽出することによって生成される。

 イヌリンは日本においては、まだ知名度は高くはないが、とくに欧米では様々な食材や食品の中に使用されている。例えば、育児粉乳・ベビールフード、シリアルやパン、ドリンクまたヨーグルトやチーズ等にも入っている。

2. イヌリンの栄養機能性

 イヌリンを経口摂取すると80%以上が大腸まで届く。これは人間がイヌリンを分解する酵素を持たないということに由来する。しかし、大腸の中の腸内細菌はイヌリンを分解する酵素を持つため、イヌリンを分解し、酢酸やプロピオン酸、酪酸というような短鎖脂肪酸を作り出す。短鎖脂肪酸は、人間にとってはエネルギー源であるため、ほぼ体内に吸収される。

 また、このイヌリンの栄養機能として、ビフィズス菌を増やす整腸機能が報告されているが、血糖値の上昇抑制、中性脂肪の低下については、機能性表示食品としての表示実績もある。さらに、食欲のコントロールや免疫力の向上、そしてカルシウムの吸収というような報告もされている。

3. イヌリンの血糖値上昇抑制

 吉成氏は、イヌリンの血糖値について2つの試験データを紹介した。一つ目の試験では、小麦粉・デンプンの一部の代わりにイヌリン4、8、10、12%を添加しグルテンフリーパンを作成後、GI値を測定した結果、イヌリンが含まれていないグルテンフリーパンだとGI値は65程度であるのに比し、イヌリンの添加によりGI値低下する、添加量か多いほど低下するということが示された。

 もう一つのデータは、健康な成人男女10名を使った単盲検プラセボ対照クロスオーバー試験。ホワイトブレット、イヌリン (5.2g)有無のグルテンフリーパンを単回摂食し2時間血糖値を測定した曲線下面積で評価した。 その結果、血糖値曲線下面積において、グルテンフリーパンのイヌリン無添加群に比べて添加群は有意に低値を示した。

4.イヌリンの摂取によってなぜ血糖値昇が抑制されるのか

 このメカニズムは、大きく分けて二つ考えられる。まず一つ目はグルコースの吸収障害が行われている。in vivoの実験では、ネズミの小腸を使い、グルコースとイヌリンを同時に摂取した場合、グルコース単独で与えたものよりもイヌリンを一緒に与えるとグルコースの吸収阻害が見られた。

 また、もう一つのメカニズムは、イヌリンの摂取によって腸内細菌が作り出した短鎖脂肪酸がインスリンの分泌に影響があるというもので、この報告では、大腸腸管内のL細胞から腸管消化管のホルモン(GLP)が産生され、膵臓のインスリン分泌というのを促すと報告されている。

 さらに、白色脂肪細胞に直接働きかけをし、レセプターを刺激することにより、脂肪の取り込みというものが抑えられるという報告もある。この短鎖脂肪酸はまた、白色脂肪細胞において食欲をコントロールするレプチン産生を増加させるという報告もある。

 この食欲のコントロールに関して、同原料を用いて行ったユニークな試験がある。7~12歳の肥満気味の子供42名を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、イヌリン1.8g/日摂取のイヌリン摂取群、マルトデキストリンを同量摂取のプラセボ群の2群に分け、16週間後ビュッフェ式朝食を自由に摂取させた。このビュッヘでは、親がついてまわって何をどの程度食べたのかを記録した。

 その結果、イヌリン摂取群でプラセボ群に比べて、摂取カロリーが低下傾向であったにも関わらず食後の満腹度合いがイヌリン摂取群で有意に高値を示した。このことにより、イヌリンを摂取することによって食欲のコントロールというのがなされたと推察された。

 最後に、吉成氏は、講演を以下のようにサマリーして講演を終了した。

  • イヌリンは水溶性食物繊維として、パンやヨーグルト、チョコレート、  飲み物等として使える
  • 口から摂取していただいて80%以上が大腸にそのまま届き、大腸内の整腸作用  をはじめとして、腸内細菌が生成した短鎖脂肪酸が様々な機能をもたらす
  • イヌリンは、血糖値の上昇抑制だけでなく、中性脂肪、免疫力そして食欲の  コントロール、カルシウムの吸収など、多くの報告がある。

(スローカロリー研究会事務局)


(2021年04月 更新)
(2021年04月 公開)