糖の質に着目した研究開発の意義

奥野 雅浩

一般社団法人 スローカロリー研究会
理事 奥野 雅浩
(三井製糖株式会社 事業創造本部 事業開発部)

 私は大学院で砂糖の物性研究に関わり、身近な砂糖でも未だに解明出来ない物理現象が有ることを知りました。その後、砂糖を販売する企業の開発員として、糖質の物性と、糖質の代謝のされ方に関する研究開発を行わせていただき、美味しさや保存性に対して糖質が担っている役割の大きさを再確認するとともに、糖質が健康に与える影響には不明瞭な点が多くあることも知りました。

 糖質の世界は知れば知るほど奥深さを感じるのですが、現在、食品業界では"糖質カット"の商品開発が盛んであり、これらの商品に影響を受けた一般消費者の中には、糖質は単なるエネルギー源であって少なければ少ないほど良い、と考える人もいます。確かに、どんな栄養素でも過剰に食べた場合は弊害が出ますので、糖質の過剰摂取を勧めることはできません。しかし、バランス良く食べれば糖質を摂取しても全く問題は生じず、むしろ糖質摂取によるメリットが得られます。糖質は美味しく満足の得られる食を形成しており、そのような食は人を集め、団欒をつくります。糖質が良い悪い・・・と極論を考えて食を窮屈なものにするのではなく、食を素直に楽しむためにも、糖質に対する過度なネガティブイメージを払拭したいと考えており、そのきっかけになるのが、糖質の消化吸収速度に着目したスローカロリーという考え方です。

 本研究会を通して、各分野専門の先生方や食品業界の研究・開発担当者とスローカロリーに関して研究・議論しながら、糖質の存在意義を再確認し、高齢者や運動不足の現代人に適した糖の質について考えていきます。糖質は大半の食品に含まれている基礎となる栄養素であり、その糖質の質を現代人に適した形に変えていくことは、日本国民の健康に大きな影響があります。食品業界がスローカロリーで盛り上がり、糖質をカットする考え方だけではなく、糖質の質を変えることで健康に寄与できる食品を開発できる環境にしていけるよう努めていきたいと思います。

(2017年04月 更新)
(2015年03月 公開)
スローカロリー3分間ラーニング