ご挨拶
一般社団法人スローカロリー研究会
理事長 宮崎 滋
現代日本の食生活は、バラエティに富んだ食文化とともに、健康づくりを意識した市場マーケットをも成長させてきました。特定保健用食品(トクホ)をはじめ、4月からスタートした機能性食品の栄養機能表示等、食生活における健康づくりは国策のひとつとなっています。
いわゆる3大栄養素の中では、エネルギー(カロリー)摂取量が昔から最も注目され、食事量の目安として様々なシーンで活用されてきました。これに加え、昨今では糖質制限食が一般生活者の間でも関心が高まっています。共通するのは、カロリーも糖質も"減らすこと"で体重減少をめざしていくというものです。しかし、肥満とともに"やせ"も同時にクローズアップされており、食の問題は単に"量"の加減だけでは解決が難しいとの実感を、多くの現場指導者達はもっているようです。
人はそれぞれの生活環境の中で、年齢や体調、趣向に合った食を毎日選択していかなくてはなりません。中でも糖質は私たちが生きるために必要なエネルギー源であり、思考や活動のために中心的な役割を果たしています。糖質摂取量が極端に落ちると、思考力や活動力も落ち、栄養バランスが崩れてきますので、糖質は適切に摂取する必要があります。また、糖質を意識的に摂取すべき人もいます。糖尿病患者さんはもちろん、成長期の子どもや妊婦さん、高齢者、体力を必要とする職種に就いている人、持久力や瞬発力を必要とするスポーツ選手など、様々です。では、必要なエネルギー量、栄養バランスを維持しながら、糖質を上手に摂取するにはどうしたらよいのか?巷ではあまり議論されていないように見受けられます。
そこで注目されているのが「スローカロリー」です。「スローカロリー」は、糖質の"質"や"摂り方"に着目した考え方です。狭義ではゆっくりと消化吸収できる糖質(エネルギー)を摂ることで、急激な血糖上昇、過剰な脂肪蓄積を抑えること。そのために、食物繊維の多いものをメニューに取り入れ、たくさん噛み、時間をかけてゆっくり食事を摂る。そして規則正しい食習慣を身につけることで消化しやすい身体をつくる、という広義の考え方にまで及びます。
この「スローカロリー」は、多くの効用があることが様々な研究で明らかになっており、その活用についてさらに検証し、データを蓄積していくべきだと考えています。糖質をどのように摂取するか、関連領域の専門家の視点でその可能性を見出し、一般生活者へ啓発していくことを目的に、平成27年2月10日に設立されました。
今後さらに加速していく我が国の高齢化で、国のパワーが落ちていくのではと危惧されます。そのためには、健康寿命を長く保ち、活力のある生活を続けていけるような社会づくりを、私たちは真剣に考えていかなくてはなりません。元気の源であるエネルギー、糖質を適切に活かしていけるよう、私たちはエビデンスを集め、広く情報発信を行っていくとともに、食のインフラを支える食品メーカーなど産業界とも情報共有を行い、産学連携で新たな食の未来を創造していけたらと考えます。
つきましては、関係職域の皆さまにおかれましては、ぜひご参画、ご支援を賜りたくお願い申し上げます。