スローカロリーへの道のり

難波光義

一般社団法人 スローカロリー研究会
理事 難波 光義
(兵庫医科大学病院 病院長)

 止まることを知らない、肥満・糖尿病など生活習慣病の増加。両者は心・脳・腎などにおける血管合併症のみならず、アルツハイマー病発症の背景疾患でもあるという警告がすでに厚労省から出されている。人体が外界から栄養素を取り入れ、わがものとして同化していく過程では、脳・膵臓・脂肪組織に加えて何よりも消化管が最大の役割を演じている。消化管に存在する消化管ホルモンのうち、インクレチンと呼ばれる2種のホルモンは、とりわけ糖質の吸収・同化に際して必須のメッセンジャーであるが、単純糖質(ショ糖・ブドウ糖・果糖など)の急速・過剰な流入に対しては、分泌パターンの異常を生じ、これが肥満・糖尿病の成り立ちの根底にあるという研究成果が積み重ねられてきた。

 われわれ日本人が祖先から受け継いできた日本食。今、世界でその価値が評価されつつある。そこにある基本は高繊維のスローフードと低脂肪であり、健康を目指す日本人自身が回帰すべき原点でもある。単純糖質を極力抑え、さらに繊維に富む食品によってそれらの吸収を緩徐にさせ、インクレチンの分泌パターンもより正常化させることが、肥満・糖尿病への悪循環を断ち切るヒントでもある。

 現代の日本人の食生活において、前述の注意を常に払うことは非常に困難な課題ともいえるが、インクレチンの分泌を少しでもより穏やかに是正できる食品を適宜取り入れることも一つの打開策といえよう。

 本研究会は、吸収がより穏やかな糖質をはじめスローフードの健康への効能、さらにはこれらの活用も含めたスローカロリーの意義について研究を展開し、その成果を発信していくという使命を担っている。

(2017年04月 更新)
(2015年03月 公開)
スローカロリー3分間ラーニング