「スローカロリー」を導く食生活スタイル

柴崎 千絵里

一般社団法人 スローカロリー研究会
監事 柴崎 千絵里
(東京女子医科大学病院栄養管理部 栄養士長)

 病院で臨床栄養を行っていると、ストレスによって食欲の調整がうまくいかなくなる人(患者さん)がとても多いことに驚かされます。それは、食べ過ぎによる「肥満」のみならず、摂食障害(神経性やせ症)で食べられない「やせ」の人、糖尿病などで食事療法中のストレスでドカ食いしてしまう人など、様々です。またそれを改善するための食事療法やダイエットにおいても、食欲を調整することにつながります。つまり、食はストレスと密接なつながりがあるということです。

 食生活を改善したい気持ちがあっても、なかなか実践に結びつかないことはどなたも経験あることではないでしょうか。よくあるケースでは、働くお父さんが日中は忙しくて食事がとれず、仕事が終わった深夜帰宅後、空腹感とストレスで食べすぎ、飲みすぎてしまう。また、専業主婦では、昼食の準備が億劫で簡単に済ませ、帰りの遅い家族を夕食も食べずに待っていますが、小腹がすいてお菓子をついつい食べすぎてしまうなど、食事内容とともに食べるタイミング・時間に問題がある場合も多々みられます。

 私たちの食事指導では、炭水化物が適切に入ったバランスよい食事をゆっくりよく噛んで食べる=スローカロリーをはじめ、食べる環境、食べる時間帯、誰と食べるか等、外的・心理的要因、生体リズムなど、食を通した全てを含めた改善の提案を検討していく必要があると考えます。しかし、病気療養のための食事であっても、患者さんの楽しみを奪うような形でない方法を、このような包括的な視点を加えてひとりひとり指導していくのは、なかなか難しいことです。

 この会では、臨床で多くの患者さんに教えられた食にまつわるエピソードを無駄にすることなく皆さんと共有していきながら、スローカロリーを活かした食生活コーディネートについて考え、情報を発信していきたいと思います。

(2017年04月 更新)
(2015年03月 公開)
スローカロリー3分間ラーニング