1. パラチノースの特徴とは?
---- パラチノースの特徴とは?
難波: この結果はパラチノースの構造にヒントがあります。私たちの小腸にはαグルコシダーゼという消化酵素があり、吸収直前になってはじめて単糖に分解されるようにすることで、腸内細菌などに栄養を奪われにくくする働きをしています。
難波: パラチノースは、唾液、胃酸、および膵液の消化作用を受けず、小腸でαグルコシダーゼの一種であるイソマルターゼという酵素によってグルコースとフルクトースに分解され、小腸内ですべて消化吸収されます。この酵素反応はゆっくり進むので、パラチノースの消化吸収速度は遅く、過去の研究によると砂糖の約1/5 と言われています。そのため、摂取した際の血液中へのグルコースの流入が砂糖よりも穏やかで、血糖値やインスリン分泌の急激な変化を引き起こしにくいというのが特徴です。
砂糖を大量に摂ると激しく血糖値が上がり、それに反応してインスリンが過剰に出るので、少し遅れて反応性低血糖が起こります。パラチノースの場合は急激に血糖値が上がらないので、インスリンは穏やかに出て、穏やかに推移します。摂取後の血糖変動の山(ピーク)は低く、谷も穏やかになるということです。これによって、高血糖の悪影響を軽減できるのと、その反動(反応性)による下がりすぎがないので、空腹感を助長することも少なくなるというように、両方を軽減できるのがパラチノースのメリットですね。
砂糖とパラチノース
---- 先生は、パラチノースを以前から注目されていたのですか?
難波: 実は、この研究を行う少し前まで、砂糖と同じ二糖類にこういうものがあるのを知らなかったのです。僕たち医者は、食品のことって意外と知らないんですね。食事療法の指導では、カロリーや摂取量のこと、たんぱく質や糖質、脂質といった成分のことについては何となく気を遣うけど、消化吸収過程のことまで考えることがありませんでした。
消化吸収を考えた指導としては、ファイバー。繊維をたっぷり摂ると吸収が穏やかだから、野菜をたっぷり先に食べましょうねとか、よく噛みましょうねという話になるのですが、同じ糖質で、同じカロリーでも消化をゆっくりにするノウハウがあることなんか考えもしなかったんです。ここまで作り上げたお砂糖屋さんの大きな手柄だと思います。
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(2022年05月 公開)