エネルギー源としての糖質を考える
糖質の役割とは、カロリーの“量と質”

1-3.
糖質の"質"を考慮して取り入れる

池田 義雄 先生 池田 義雄

日本生活習慣病予防協会名誉会長
スローカロリー研究会顧問

――糖質を極端に制限するということは、日常生活では難しいのですね

池田 糖尿病患者やその予備軍における糖質制限食の有用性は、短期的には明らかです。長期的にはタンパク質や脂質の過剰摂取による弊害など、議論が必要ですのでお勧めできません。短期的な視点であっても、糖質からの摂取エネルギーを20~40%程度に抑えるといった極端な糖質制限は、入院状態の患者に対して厳重な監視下で行わなければ実現することは難しいですね。メニュー的にも難しいと思います。

――タニタ食堂では、糖質についてどのような配慮がなされているのでしょうか

池田 タニタ食堂のは、緩和な糖質制限食といえます。通常のランチでは、60%程度が糖質からのエネルギー摂取となりますが、タニタ食堂では大体40~50%の範囲になっています。ただし、全体のエネルギーの中でタンパク質や脂質、ビタミンやミネラルを供給する野菜・果物などを確保した上で、食事を摂る方ご自身で健康や理想の体重を意識して、米飯やパンといった穀類でエネルギー全体量の調整をしてもらう形をとっています。自己管理が重要ですね。

――自己管理が重要とのことですが、何を指標とするのが好ましいのでしょうか

池田 来年から始まる日本の新しい「食生活指針」が厚生労働省から発表されていますが、結局のところエンドポイントはBMIです。従来は、摂取エネルギーを考慮して食事量を考えていくものでした。これは、理論的には正しいのですが現実的ではありませんでした。摂取エネルギーと消費エネルギーを正確に測ることはできません。要するに、結果は体重や体脂肪に表れてくるということです。そのため、新しい食生活指針は、目標とするBMIに近づけるような食生活を送りましょうということです。米国の指針と同様であり、何をどれだけ食べるのかは自己管理しなさいと、国民に丸投げしたとも言えますね。米国では、すでに取り入れられており、糖尿病の患者ですら決めるのは自分自身です。しかし、この考え方は決して間違いではいないと思います。

――自己管理をする上での注意点は

池田 自己管理をしようと思うと、知識が要求されますよね。日本生活習慣病予防協会では、正しい知識の啓発活動に力を入れています。それは、特定の食材を提供するといったものでもなく、食事指導だけというわけでもありません。個々人にとって、適正なBMIはさまざまとなりますので、理想のBMIに近づけるための食事をはじめ飲酒量や運動、休養さらには禁煙を含めた啓発活動になります。必要な食材を挙げるのであれば、発酵食品や食物繊維でしょうか。この二つが満たされると結果として生活習慣病予防には有効だといえるでしょう。

――糖質についてはどのような知識が必要でしょうか

池田 まず改めて、糖質はエネルギー源としての利用率が高く、摂取した後にさまざまな有用性をもたらしてくれるということを理解するべきですね。糖質といえば砂糖と思う人が多くみられますが、米飯やパンといった穀類からの糖質摂取量の方が多く、影響も大きいです。全体のエネルギーを考慮し、穀類の量を調節すると良いでしょう。甘味料という点でいえば、安易にノンカロリーの甘味料を使用するという考え方は健常者にはお勧めできません。エネルギーのある糖質にはノンカロリーでは得られない良い効果があるのです。例えば砂糖の場合、甘味ととともに1g当たり4kcalというエネルギーが生体に付与され、その際の効果は、心地良さや疲労の回復において即効性があります。スポーツをされている方でも水分と同時に糖質を補給しなければパフォーマンスが上がりません。さらに望ましくは、糖質の"質"を考慮して取り入れるということです。同じエネルギーであっても消化吸収のされ方が異なりますので、各種ホルモンの分泌状態が異なってきます。消化吸収がゆるやかなスローカロリーの考え方を上手く食生活に取り入れることが大切です。

出典:食品化学新聞 2014年11月27日(第2561号)

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(2015年10月 更新)
(2015年09月 公開)
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