エネルギー源としての糖質を考える
糖質の役割とは、カロリーの“量と質”

3-1.
スローカロリーを実現し、長寿に

家森 幸男 先生 家森 幸男

武庫川女子大学教授
国際健康開発研究所所長

――寿命を決定づける因子はなんですか?

家森   私は世界中の国々で、24時間にわたる尿を採取し、客観的な栄養のマーカーを調べる方法で栄養評価を行ってきました。「人は血管とともに老いる」と言われるように、血管の障害が寿命を決定します。主な血管の障害は、2大血管病と言われる心筋梗塞と脳卒中です。特に、心筋梗塞の発生頻度が多い国の寿命は短いのです。心筋梗塞を引き起こす原因は大きく2つあります。一つは肥満であり、もう一つは脂質の摂り方が偏り、血中の悪玉コレステロールが高くなることです。

――日本の状況はいかがでしょうか

家森   日本は、世界で1番の長寿国であり、先進国の中で最も心筋梗塞が少ない国でもあります。特に女性は1980年代以来、20年以上にわたって1番の長寿を維持しています。日本人女性の平均寿命は87歳で、ようやく男性も80歳を超えました。男女で平均すると84歳となり世界のトップとなります。肥満が少なく、悪玉コレステロールの上がらない食生活で、心筋梗塞が少ないからです。

――日本人の食の特徴は

家森   世界中で調べた結果、日本人の長寿は、主に米からエネルギーを摂取していることが先ず影響していることが分かりました。非米食圏と比べて米食圏の方がコレステロールや肥満は少ないのです。お米は、悪玉コレステロールを上げません。また、お米は、精白された小麦などの他の質源と比べて血糖値の上がり方がゆっくりとしていて、肥満を引き起こしにくいのです。

 特に日本人は、お米とともに血糖値の上がり方がゆっくりとなるようなおかずを一緒に食べます。正に日本人の米食文化はスローカロリーなのです。日本の食の素晴らしい点として一つは大豆が挙げられます。心筋梗塞は、男性と比べて女性のほうが少なく、世界中で男性と比べて女性の心臓死は3~4割で少ないことが分かっています。女性ホルモンが、心筋梗塞を防ぐように働いているからです。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモン様の作用があり、心筋梗塞を防いでくれるのです。つまり、イソフラボンは、血管を拡張させる物質を作る一酸化窒素を産生します。そうすると、血管は拡張し、血液はサラサラになり血栓ができ難くなります。そんなわけで大豆の日常的な摂取は心筋梗塞を予防するのです。その上、大豆自身もスローカロリーです。

 また、魚を良く食べることも素晴らしい食習慣です。魚には、タウリンというアミノ酸が豊富で、血圧やコレステロールを下げる効果があります。また血液をサラサラにするDHAやEPAといった多価不飽和脂肪酸も心筋梗塞を減少させるのです。米食を中心に大豆や魚を食べる食習慣でスローカロリーを実現し、長寿を実現しているのです。

――世界で見ると食はどう変わってきていますか

家森   世界で見ると、スローカロリーとは逆の食生活が急速に広がってきています。例えば、貧しい国であるにもかかわらずアフリカなどでは肥満が増えています。当然、心筋梗塞も多くなります。またインドは経済発展を遂げていますが、まだまだ発展途上国です。しかし、インドでも肥満が増えているのが実情です。

 何故、世界中で肥満が増えているのかについてはアフリカでの調査がヒントになると思います。アフリカの食生活は、食物が十分なかった時代の名残で1日1食が基本です。夕方に日が暮れる前におなか一杯に食べます。都会に住んでいる人も、田舎に住んでいる人もその食生活は変わりません。ところが、都会に住んでいる人だけが肥満が増えています。都会では、甘いドリンクやファストフードが増え、糖分の消化吸収が速いファストカロリーの食べ物を常に摂取できるようになったのです。血糖値がすぐに上がりますが、インスリンが分泌されるので血糖値が急に下がり、またおなかが減ってファストフードを食べる。このインスリンの過剰な分泌の繰り返しが非常に危険であり、世界中で肥満を多くしている原因ではないかと考えます。

出典:食品化学新聞 2015年08月13日(第2596号)

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(2015年10月)
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