エネルギー源としての糖質を考える
糖質の役割とは、カロリーの“量と質”

3-2.
スローカロリーで生活習慣病を減らす

家森 幸男 先生 家森 幸男

武庫川女子大学教授
国際健康開発研究所所長

――アジアの食の異常事態とは

家森   アジアで肥満が多くなっている国々では、実はベジタリアンが大きな問題を抱えています。ベジタリアンは一見健康的なイメージがあるかもしれませんが、厳格なベジタリアンでは動物性タンパク質を摂取できません。

 例えばインドでは、子供たちの尿を検査すると、日本の子供と比べてタンパク質の数値が半分です。このような食生活では、大事な成長期に筋肉が作られず糖を使えませんので糖尿病のリスクが高まります。動物性タンパク質を摂らないようにすると、結果として、炭水化物と植物性油から多くのエネルギーを摂ることになります。近年になってスナック菓子や清涼飲料水のような加工食品が市場に多く出回るようになりましたので、ベジタリアンが加工食品を摂取する機会が非常に増えています。脂の摂り過ぎと、吸収速度が速い形での糖分の摂取を毎日続けてしまうわけです。

 事実、インド、インドネシア、スリランカなどの国では糖尿病が増えています。まずはタンパク質をしっかり摂る必要がありますので、私どもは試験的に学校給食で大豆を食べてもらう活動を行っています。若い人から食生活を変えていかなければと考えています。

――ベジタリアンの問題に対して他のアプローチはありますか

家森   糖からのエネルギー摂取割合が多くなってしまうベジタリアンにとっては、糖の質を変えることが非常に効果的であると確信しています。一緒に食物繊維を多く摂ったり、糖の消化吸収速度をゆっくりにする、すなわち、スローカロリーにすることで、健康維持の効果が間違いなく得られます。

――家森先生にとってのスローカロリーの将来像をお聞かせ下さい

家森   人類の食文化や体内での役割を考えますと、脳や筋力の"エネルギー源としての糖"は人間の活動にとって必要不可欠です。しかし、糖の利用の仕方が問われます。世界中で食の欧米化が進んでしまい、脂質過剰で、かつ、糖の消化吸収が速い形で摂取してしまう"ファストカロリー"の食が急速に広がり肥満や生活習慣病が急増しています。たとえ欧米的な食習慣があったとしても、糖の消化吸収に注目し"スローカロリー"に変えていくことで、生活習慣病を確実に減らすことができると思います。世界には日本人では考えられないくらい多く砂糖を摂取する習慣を持つ国があります。まずはそういった国々で、実証研究でエビデンスを重ね、スローカロリーの考え方を世界の人々が納得するよう広めていくべきです。

出典:食品化学新聞 2015年09月03日(第2599号)

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(2015年10月 更新)
(2015年10月 公開)
スローカロリー3分間ラーニング